「売らない営業マン」

merumaga_20100903_01

from 杉本

関西の、ある大学病院で、
ドクターにあったときのこと。

「お前とこの、営業担当者なあ、
 何とかしてくれ!」
「先生、何かご迷惑を
 おかけしていますか?」
「あいつ、いつも売りに来るんや!」

私は、ある時期、
ジョンソン&ジョンソンと言う
外資系の医療機器会社で、
営業トレーニングの統括をしていました。

延べ数百名の営業担当者を、
トレーニングする中で、
成功している担当者と、
そうでない担当者には、
明らかな違いがあったのです。

それは、成功している担当者は、
売ろうとしない
のです。
それに対して、成功していない担当者は
製品を、一生懸命売ろうとするのです。

一例をご紹介しましょう。

岡山県全域を担当しているAさんは、
手術室から出て来たドクターが、
ソファーに座って、

「この間の外科学会の抄録
(発表文献の抜き書き)、
 誰か持ってないかな〜?」
というつぶやきを聞きました。

彼は、すぐに病院を出て、
携帯電話で 東京本社の
マーケティング部に電話しました。

「この間の、外科学会の抄録を
 持ってますか?」
「うん、持ってるよ。」
「今すぐ、新幹線便で
送ってもらえますか?」

彼は、何時の新幹線便に
乗せたかを確認して、
岡山駅に向かいました。

駅の受け取り窓口で、
抄録の入った封筒を受け取り、
急いで、その病院に帰ります。

彼は、そのドクターを捜して、
「先生、抄録持ってきました。」

「ええ〜っ!午前中に
 話していた、あれかい?」

「はい、そうです。
 本社のマーケティング部が、
 持っていたので送ってもらいました。」

「悪いな〜。世話かけて。」

ドクターがつぶやいていたとき、
競合他社の営業担当者も
何人かいました。
彼らも聞いていたはずです。

恐らく、何日か後の、
彼らの訪問予定日にでも、
持って来るのだと思います。

「先生、私が責任を持って、
 持参いたします。」
と豪語していた人もいました。

でも、その日のうちに、
持って来た人は、
彼だけだった
のです。

学会の抄録を持っていくのは、
製品を売ることではありません。

しかし、これは大きなセールスなのです。

彼は自分を売っているのです。
言葉を変えて言えば、
第一に、顧客と
信頼関係を築いている
のです。

ただ、こんなことは、入社のときに、
私が口を酸っぱくして、
全員に、さんざん教えています。

しかし、多くの営業担当者は、
我慢できずに、すぐに、
売ろうとするのです。

売ろうとすると、
自分のしゃべろうとする、
セリフのことで、
頭がいっぱいになります。

すると、顧客の話していることが、
心にちゃんと留まらないのです。

すると、顧客は、自分に対して、
心からの関心を
示していないことに気づきます。

ですから、顧客も相手に、
心からの関心を示そうとしません。

しかし、Aさんは、
まず顧客が何を望んでいるのかを
知るために、熱心に相手の話を聴きます。

「聞く」は「聞こえてくる」の聞くですが、
「聴く」は、文字通り、
耳と、目と、心で
聴こうと努力すること
です。

小さな望みでも、見つけたら、
それを、ライバルに先駆けて、
顧客の予想を超える、
内容とスピードで
それを達成して上げるのです。

すると、顧客は、
恩を受けた分だけですが、
それを返そうと思って、
小額でも、自社製品を採用してくれます。

信頼が深まれば、もっと顧客は、
恩返しがしたくなり、
製品をたくさん買ってくれるのです。

相手が自分に何をしてくれるか?
ではなく、まず自分が、相手に、
何をしてあげられるかを考える。

この原則は、親と子、友達同士、
すべての、人間関係に当てはまります。

「営業で成功したければ、親や、子や、
 友達に、それを試して見なさい。」

と営業担当者に、
ずっと言い続けてきました。

この話からあなたは
何か、気づきを得られましたか?
だとすれば、私にも教えて下さい。

育自コンサルタント
−自分を育てるお手伝い−

杉本恵洋(すぎもと しげひろ)

PS.
営業で成功したい人が
知っておくべき話もたくさんあります。
http://www.0stresslife.com/zrl/

5 thoughts on “「売らない営業マン」

  1. 『相手が自分に何をしてくれるか?
    ではなく、まず自分が、相手に、
    何をしてあげられるかを考える。』

    ここの部分に凄く共感しました。
    私も自分でビジネスを、行っておりますが、親や友人の関わり方を変化させてわまずは与える事のみにフォーカスすると、そこから徐々にビジネスの売り上げがUPしてきたと凄く感じております。

    貴重な学びをいつもありがとうございます!

  2. 相手に何をしてあげられるかをまず考える。
    出来る時もあれば、出来ない時もあります。
    相手との今までの関係性で、
    お互い素直に表現も出来ず、
    澄んだ心で見たり聴いたりというのも、
    できなくなっているのでしょうか。
    出来る時が増えるように、どうすればいいのか、考えてみたいと思います。

  3. 自然な感じで余裕のある営業マンは接していても気持ちいいものです。
    目がギラギラで発言が嘘っぽい人は、はじめからお客側としても拒否反応を起こしてその時点でアウトです。
    と同時に今の自分も見直していきます☆

  4. 幸福に長生きしますように、幸福な輪廻転生をしますように。
    すばらしい、ありがとう、日本から。
    wonderful. thank you. from Japan.
    kouitirou toyosima

  5. 優秀な営業マンは本人の素晴らしさもあるだろうけど、所属している会社のよさもあると
    思います。多くの自分勝手な押し売りセールスマンも本人の悪さもあるだろうけど、所属している会社が結局は悪いということもあります。ノルマや短期的な実績のみ追及するから人も取引先との関係もうまく構築していけない。残念ながら今の日本企業は四半期など
    短期的な結果で物事をみるようになってしまいこのような元々いた優秀な人は減少傾向にありますが、結果を出す人のストーリーとして本当に的を射ている実話だと
    思います。読んでいても気持ちのいい話です。

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