ことばのワクチン

因果関係を理解することは、究極の目標とも言えます。

吉永賢一
吉永賢一

しかし私たち人間の限られた知性では、
すべての因果関係を理解することは、
とてもではありませんができないのだろうと思います。

そのような限られた能力を持つ私たちですが、
それでも、ある程度解明されている因果関係もあり、
たとえば物理学は、その一例です。

物理では、F=maという等式を習います。

これを因果関係で解釈すると、
Fという力が「因」であり、
aという加速度が「果」になります。

つまり、力という原因によって、
加速度という結果が生じるということです。

そして、この等式がすごいのは、
これは「同時因果」であるということです。

「同時因果」という観念は日常生活になじまないため、
多くの生徒は、F=maの等式を理解することが困難です。

しかし、その困難さが「同時因果」に由来するものであることがわかると、
事前にその誤解を防ぐ説明をすることができます。

それは「ことばのワクチン」とも言え、
予防作用を持ちます。

つまり、実際に現場に出て、生徒の誤解を体験し、
その原因を観てゆくことにより、はじめからその原因を解消する説明を
先行してやってゆくことが可能になってくるわけです。

このようにして、現場において
「現に生じる(生じている)問題」を予防してゆくことにより、
現場で実際に生じる問題が減少してゆきます。

予測される誤解や不足に関しては、
事前に「ことばのワクチン」を打っておく
ことによって予防することが有効です。

たとえば、食事の前に手を洗わないという
不足を現しそうな生徒さんがいたならば、
事前に「食事の前には、手を洗ってね」と
言っておくことによって、予防作用が期待できます。

この場合、「ことばのワクチン」は、継続して使用することにより、
蓄積して効果を現してくるという仕組みを理解していることが大切で、
すぐに結果が出なくても、あせらずに、事前に「ことばのワクチン」を
投与することを繰り返し、蓄積により、その効果が現れてくることを期待します。

効果が顕現することを促進するには、
不足が現れた直後のネガティブフィードバック(ネガティブなストローク)、
満足が現れた直後のポジティブフィードバックが有効です。

そして、もしネガティブなストロークに耳を傾けてくれる生徒さんがいれば、
その「耳を傾ける」こと自体は満足を示しているわけですので、
その部分にはポジティブなストロークを打ってゆきます。

例)
「聞きにくいことを聞いてくれて、ありがとう。
○○君のためになると思うことだから言ったんだけど、
なかなか、こういうことって、気持ちが不快になって、聞いてもらえないものだから」

話をF=maに戻すと、日常生活で耳にすることが多い因果は「異時因果」で、
「原因」と「結果」が時間的に離れており、
原因が発生してから、結果が発生するまでにタイムラグがあります。

ところが、F=maの「=」が示す因果は同時因果であり、
Fが変化すれば、その瞬間に、同時に連動してaも変わります。

Fが2倍になれば、その「全く同じ瞬間」にaも2倍に変わっています。

この「同時因果」が、おそらく直観に反するために、
理解のむずかしさを生んでいると思います。

F=maは同時因果、ことばのワクチンは異時因果、
こうして因果関係を理解してゆくことが、
人生をしあわせにしてゆくと思うのです。

ー吉永賢一

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12 thoughts on “ことばのワクチン

  1. 仏教の縁起と重なったので、よく理解できたし、とてもありがたい、皆に理解してもらいたい教えだと思いました。

  2. 同時因果という言葉は初めて聞きました。僕はプログラムの代数という概念がなかなか理解できないのですが、もしかすると今日の記事が大きなヒントになるかもしれません。ありがとうございます。

  3. 「ことばのワクチン」腑に落ちました。
    子どもへの具体的な対応を読みながら、
    未病の考え方と繋がりました。

    因果関係を禅的に話されても
    どこか雲をつかむようでした。
    物理学で説明されると
    「あぁ、なるほど…」輪郭がつかめました。
    ぐっと、リアルです。

    ことばのワクチン、実践してみます。

  4. 物事には結果と原因があるということは原理原則ですよね。
    価値観が違う世の中だからこそ、伝える言葉を前もって準備することで、
    お互いの理解のズレを防ぐことができるのかなとおもいました。

  5. 勉強になりました。
    > その原因を観てゆくことにより、はじめからその原因を解消する説明を
    > 先行してやってゆくことが可能になってくるわけです。
    どんな分野でも応用可能なコトですよね。

  6. 少し難しいですけどためになる話で特に上に立つ人は知っておくとためになりますね。
    でも実際に上司が本当は知っていても部下の方が高学歴だったりすると部下がするであろう失敗をさせて「やっぱり学歴が高くても実際のビジネスって違うんだよ。」と足を引っ張り予め
    誤解を解いて理解させてあげるようなことはしない意地が悪い場合もあるのでその点も理解
    しておく必要があるし、逆にフィードバックがないけれども実際には失敗を避けるように
    先輩がいい注意をしてくれているのに聞き入れないこともありがち。上にいる人ならもう一つフォローすることで下の人の理解を得られやすくなるし、下の人なら上の人のアドバイスに対しても否定するのではなくて質問することでF=Maの公式が成立する方向に持っていく応用ができればベストですね。

  7. 異時因果からなる問題を、同時因果の観点から予防し、F=maの等式に近づけるとき、因と果が同時にループしている状態になっている、ということだという解釈で良いのでしょうか。
    因が変わった瞬間にその影響で果も変わっている状態ですね。とても面白い話で、興味深く読ませていただきました。

  8. そうですね。ちょっと理解に苦しみます。
    物理の公式をことばの因果関係と結びつけるところに難しさがあるのではないでしょうか?
    予防を異時因果に結びつけるところに無理があるのではないでしょうか?
    もう少し、小学6年生ぐらいでも理解できることばで説明できると面白いと思います。
    少し下界へ降りてきてください。
    底辺が向上しないと上も期待できなくなってしましますよ。

  9. 生徒の「聞く」という行為に対してきちんとポジティブストロークを打つ点に感心しました。相手が子供であれ大人であれ、否定する際に肯定できる部分をほかのマイナス部分と混同するケースは多々あるかと思います。そこをないがしろにして、自分の正義(と信じているもの)を撒き散らすのではなく、良い部分と悪い部分を正しく評価しないといけませんね。子供であっても、聞き手は予想以上に繊細で、しかも注意深く話し手を観察しますから。
    自分が子供の頃、教師が理解しようとしてくれない内なる想いや正義が見過ごされて憤りを感じていました。

  10. みなさんのコメントを読んだので改めて(自分の理解の整理のために)書きます。

    どうもF=maの同時因果とワクチンの異時因果の話がごちゃごちゃになっているように感じました。私なりに今回の記事をまとめると
    ・因果関係についての導入
     (例)同時因果を説明しておけばF=maは理解しやすくなる
     -事前にアドバイスすることで失敗を予防できることの例(=ことばのワクチン)
    (ここの例は別のものでもよいはず。例えば、太陽に向かって歩いても一向に近づかないと嘆くこどもがいるとする。それは距離が遠すぎて近づいているように見えないだけで実は近づいている、と事前に教えてあげていればその子が嘆くことを予防できる。)
    ・ことばのワクチンの概要と実例
     -ネガティブ
     -ポジティブ
    ・因果関係についての補足
     -F=maは同時因果
     -ことばのワクチンは異時因果(これら2つは異なる形の因果関係を持っている)
    ・結論
     -因果関係を理解すれば人生は良くなる(その一例としてことばのワクチンが挙げられている。)

    別のまとめ方をしてみると(ご本人が意図しているかわかりませんが)、
    ・具体的な事象の因果関係について
     -物理事象の因果関係
     -物理事象の因果関係に関することばのワクチン投与という事象の因果関係
     -手洗いに関することばのワクチン投与という事象の因果関係
      ・ことばのワクチン使用方法
    ・因果関係の分類(いわば因果関係論?)
     -同時因果(F=ma)
     -異時因果(ワクチン)

    つまり、話をわかりづらくしているのは、F=maの話が同時因果の例にも異時因果の例にも使われている2重構造ではないでしょうか?

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